ドラッカー

 IT革命とか言ってるのは、それ自身の技術革新はもちろんそうだけれども、その技術が及ぼす社会的インパクトのほうがより重要なわけです。
 例えば国際電話の料金が安くなったおかげで、アメリカにある、ある企業のコールセンターが、英語圏かつ賃金の安く済むインドに移ってアメリカでの雇用を著しく圧迫している、という状況をみてみても、そんな自体はつい数十年前には予想だにしない現象だったわけで、新たな社会構造が構築されつつあるんだ、というふうにドラッカーは指摘しています。
 これはIT関連の仕事がこの先もどんどん増えていくよ!というお知らせではなくて、その基盤を利用した、新しい産業が生まれる可能性が開けていることを指摘したわけです(例えば、鉄道網や道路網の整備、あるいはそれによる長距離大量輸送の時間短縮によって、鉄道会社や自動車会社が潤うのと同時に、運送業や、旅行代理店など、その基盤を利用することで成り立つ新産業が成立するという構図)。
 というわけで、目まぐるしく変わる世の中の動向に目を向けていくために、非常に重要な視点を与えてくれる1冊だと思います。

ネクスト・ソサエティ ― 歴史が見たことのない未来がはじまる

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