医学教育
正直言ってアメリカの外交・経済政策はあまり好きになれませんが、教育に関しては世界一だと思います*1。
今回取り上げる『アメリカの医学教育−アイビーリーグ医学部日記』の作者は赤津さんという女性の方なのですが、まずこの人の学歴がすごい!
- 赤津晴子(1962年3月3日生まれ)
School of Medicineに至るまでに哲学と理工学を経由しており、非常に学際的な学び方をしているな、という印象を受けます。
『はじめに』のところで、アメリカの医学教育を通じて感じたことを簡単にまとめていらっしゃるので以下に引用しようと思います。
- アメリカの大学教育の一般的特徴、特にSyllabusと称する充実した講義要綱の存在、および学生が各々の講義および教師を評価するシステムの存在。
- アメリカの医学教育の特徴、とくに学生主導型グループ学習法の導入、学生にさまざまなことをやらせる、臨床実習のあり方、および幅広い医学を自由に学ばせるカリキュラム。
- アメリカの医療のなかでの感染症対策や患者の権利尊重のあり方。
- 競争社会のなかでの公正保持のしくみ、特に医学部卒業後の就職戦線のしくみ。
ここに挙げられた4つの視点をもとに本書を読み進めていくと、2の「学生主導型グループ学習」「臨床実習」「幅広い医学」が特に充実していることに気付きます。私の受けた印象をまとめてみますと、
- 積極的に知識を得ようとする学生の姿勢
- その要求に最大限答えてくれる教師陣
- 学友たちがそれぞれの持つ専門知識をシェアしようという雰囲気*2
- 得た知識を体系化すべく、弾力的、かつ充実したカリキュラム編成(特に臨床実習の多さが印象的)
といった感じです。
日本とアメリカという括りで語ってよいのか分かりませんが、両者の高等教育を比較した時、最も違うものは何かと考えると、知識をシェアしようとするかしないか、という違いが挙げられるのではないでしょうか。『三人寄れば文殊の知恵』とは言うものの、日本人は三人も寄らないのではないか?と思うのです。
この話題についてはまだまとまっていないので後日補おうと思いますが、この違いを説明する上で重要だと思われる現象がありまして、それは『独力で問題解決していく能力の要請』という、日本における教育現場の雰囲気です。一見するとなんら問題はなさそうなのですが、私はこうした雰囲気を時代に逆行したものと捉えます。
詳しくはまた今度。。。
- 作者: 赤津晴子
- 出版社/メーカー: 日本評論社
- 発売日: 1996/05/01
- メディア: 単行本
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